James Herriot - Orginal Books




各章の内容
IF ONLY THEY COULD TALK (1970)

ヘリオット先生こと、アルフ・ワイトの最初の作品集です。

タイトルを日本語に訳せば「彼らが話せさえしたならば」となります。もちろん「彼ら」とは動物たちのことですね。1970年に英国のマイケル・ジョセフから出版されました。グラスゴーの獣医学校を卒業して、北ヨークシャーはサースクのシーグフリード・ファーノン先生の下で、獣医稼業を始めることになった筆者の経験談は、何度読んでもおもしろく、痛快です。

この本の献辞はエディ・ストレイトンに捧げられています。エディはアルフのグラスゴー時代からの古い友人で、アルフよりも先に何冊かの本を出版したことがあり、アルフはこの第一作目を出版するに当たって、エディの大きな助けを得て、出版にこぎつけることができたのでした。

邦訳はアメリカ版の合本、"ALL CREATURES GREAT AND SMALL"を翻訳した「ヘリオット先生奮戦記(ハヤカワ文庫、大橋吉之輔訳)で、すべてのエピソードが翻訳されています。





各章の内容
IT SHOULDN'T HAPPEN TO A VET (1972)

ヘリオット先生の2番目の作品集です。

タイトルは日本語に訳せば「獣医にあってはならないこと」となります。
この短編集と先に出版された短編集、IF ONLY THEY COULD TALKを合本にしたものが、アメリカで企画されたオムニバス、ALL CREATURES GREAT AND SMALLです。

ただし、ALL CREATURES GREAT AND SMALLの最後の3章(ヘレンとの結婚のくだり)は、オリジナルのIT SHOULDN'T HAPPEN TO A VETには含まれておらず、合本にするにあたって新たに書き加えられたものです。

なおこの本の献辞はドナルド・シンクレアとブライアン・シンクレア(作中ではシーグフリードとトリスタンのファーノン兄弟)に捧げられています。

邦訳はアメリカ版の合本、"ALL CREATURES GREAT AND SMALL"を翻訳した「ヘリオット先生奮戦記(ハヤカワ文庫、大橋吉之輔訳)で、すべてのエピソードが翻訳されています。





各章の内容
LET SLEEPING VETS LIE (1973) 

ヘリオット先生の3冊目の本です。

日本語に訳すと「獣医さんを起こさないで」「獣医さんを寝せてあげて」みたいな感じでしょうか。
1973年に英国のMichael Joseph Ltdより発行されました。

献辞は、"To my Wife with love" となっており、ヘリオット先生ことアルフ・ワイトの奥さん、ジョアンに捧げられています。ちなみに、この本のタイトルはジョアンの提案に基づくものだとか…・しょっちゅう夜中に電話で起こされるかわいそうな獣医さんに対する、奥さんのやさしい気持ちが現れているような気がします。

この作品集に含まれているエピソードは、なかなかうまく発展しないヘレンとの交際、スケルデールハウスの独身三人衆の愉快な生活、デイルズの獣医ユアン・ロスのエピソード、おかしな農夫たち、そして最後はヘレンとのドラマティックな結婚で終わっています。

全部で26章ありますが、そのうちの9章はまだ日本語に訳されていません。





各章の内容
VET IN HARNESS (1974) 

ヘリオット先生の4冊目の本です。

辞書を見ると、"IN HARNESS"は、馬が馬具ををつけていること、平常の仕事に従事していること、などと載っています。獣医さんなのであえて馬用語を使った、ということでしょうか。日本語に訳すと「獣医さんはお仕事中」、それとも「馬のように働く獣医さん」というニュアンスなのでしょうか・・・・。

献辞は"With love to My Mother In dear old Glasgow town"となっており、アルフ・ワイトの母親、ハンナ・ベル・ワイトに捧げられています。

全部で36章ありますが、そのうちの16章はまだ日本語に訳されていません。





各章の内容
VETS MIGHT FLY (1976)

ヘリオット先生の5冊目の作品集です。

献辞はアルフ・ワイトの愛犬、ジャックラッセルテリアのヘクターとラブラドールのダンに捧げられています。日本語に訳せば「獣医だって空を飛ぶ?」って感じでしょうか。

英国空軍に参加したころのエピソードが中心ですが、この作品集では基礎訓練の日々の話ばかりで、ヘリオット先生はまだ空を飛んでおりません。

全28章のエピソードのうち、24章はすでに邦訳されております。





各章の内容
VET IN A SPIN (1977)

ヘリオット先生の6冊目の作品集です。

献辞はアルフ・ワイトの息子夫婦のジミーとジル、娘のロージーに捧げられています。日本語に訳せば「きりもみ降下中の獣医」って感じでしょうか。前作同様、英国空軍時代のエピソードが中心で、いよいよ大空に飛び立ち始めます。

この作品集も邦訳化はかなりなされており、24章中の20章まではすでに翻訳されています。





各章の内容
THE LORD GOD MADE THEM ALL (1981)

ヘリオット先生の7冊目の作品集です。

タイトルはセシル・フランシス・アレグザンダーの聖歌の最後の一節、「神がすべてをつくりたもうた」です。献辞はアルフ・ワイトの孫、ゾーイ(息子夫婦のジミーとジルの子)に捧げられています。

独身時代の1930年代の話から、英国空軍から除隊した直後の、農業社会や獣医の治療法に大革命が起きた時代の話、1950年代の子供たちとのエピソード、1961年のソ連のクライペダ訪問記、1963年のトルコのイスタンブール訪問記など、様々な時代のエピソードが紹介されております。

リーダーズダイジェストの要約版として出版されたり、女性雑誌にその一部が「ヘリオット先生の往診日記」として翻訳されたことがありましたが、2004年の春になって、ようやく集英社文庫より「ドクター・ヘリオットの毎日が奇跡(上) (下)」として、完訳版が登場しました。





各章の内容
EVERY LIVING THING (1992)

ヘリオット先生の8冊目の作品集であり、オリジナルとしては最後の作品集になります。

献辞はアルフ・ワイトの愛犬ボディと娘のロージーの愛犬ポリーに捧げられています。

時代は1950年代、ジミーとロージーの二人の子供たちの成長、新薬の登場で目覚しく進歩した獣医の仕事、若い助手たち、ジョン・クルックス、カラム・ブキャナンとの愉快なエピソード、TVの登場で変わりゆ毎日の生活、それでも変わることなく美しく感動的なヨークシャー・デイルズの自然などを描いています。

前作の"THE LORD GOD MADE THEM ALL"から10年以上の空白が空き、誰もがもうヘリオット先生は新作を出さないのだと思っていた矢先の新作であり、さらにBBCでのTVドラマが人気絶頂の時期だったこともあって、発表後すぐにベストセラーになりました。

なお、邦訳は「生き物たちよ(集英社、大熊栄訳)」で、すべてのチャプターがもれなく翻訳されています。





JAMES HERRIOT'S YORKSHIRE (1979)

この本はヘリオット先生の最大のベストセラーとなりました。

ヨークシャー・デイルズ北部からヨーク平原、ノース・ヨーク・ムーアそしてヨークシャー沿岸地方という、いわゆる「ヘリオット・カントリー」を、ヘリオット先生の愛情に満ちた叙述、とデリー・ブラッブスの美しい写真で紹介しています。

献辞はアルフ・ワイトの孫たち、ジミーの息子のニコラスとロージーの娘のエマにに捧げられています。

この本は他のヘリオット先生の著作と異なり、ヨークシャー地方のガイドブックです。
と言っても単なるガイドブックではなく、ヘリオット・サーガのエピソードにあふれたヨークシャーの写真集、と言うべきでしょうか。

ご存知のようにヘリオット・サーガはどこまで本当の話でどこからが虚構なのかわかりません。しかし、この本に出てくる地名はすべて実在のもので、その中に虚構のヘレンやら犬のサムやらが登場するのですから、また一段と話はややこしくなるのですが。^^;

ヘリオット先生はこの本の企画を聞いたとき、息子のジミーに相談しました。しかし、ジミーは乗り気ではありませんでした。それどころか、「スウェイルデールの豚臭い田舎を紹介した本なんて、一体誰が興味を持つんだ?僕たちにとっては想い出にあふれた素晴らしい場所だけど、他の人が魅力を感じるなんて考えられないね。忘れろよ、そんな話。売れないよ!」とけちょんけちょんにけなしてしまったようです。

ところが実際に出版してみると、今までのどの本よりも売れてしまい、ジミーはその著書、The Real James Herriotの中で、自分の不明をしきりに嘆いております。

また、写真家のデリー・ブラッブスを選んだ経緯も、相当とぼけたものだったようです。
なにしろ、ヨークシャーの電話帳を手に取り、「写真家」の欄の一番最初に載っていたのがデリーだったから、つまりBrabbsという苗字は、アルファベット順に掲載する電話帳の一番最初の写真家だったから、という単純な理由だったのですから!いかにも英国らしい話ですねえ。しかし、その選択はまことに的を得たもので、ヨークシャーを知り尽くしたブラッブスの美しい写真は、このガイドブックの成功の大きな要因となったのでした。

なお、英国BBCのTVドラマ"ALL CREATURES GREAT AND SMALL"でヘリオット先生役を演じたクリストファー・ティモシーが案内役となったビデオ版もあるそうです。

ヘリオット先生の著作の中では、最後まで邦訳が出なかった本作ですが、2004年の7月に、ついに日本語バージョンの「私のヨークシャー」が出版されました。

バーネット作の「秘密の花園」に魅了されてヨークシャーを訪れた谷山幸子さんが、なんと自費出版してくださったのです!版権の関係で、デリー・ブラッブスの写真は使われなかったようですが、ヨークシャー観光局の素晴らしい写真、Pat Bellさんによる絵、訳者の谷山幸子さんによる詩情あふれるイラストも満載されており、オリジナルにまさるとも劣らない素晴らしいヨークシャーのガイドブックになっております。

この「私のヨークシャー」ご興味のある方は、下記の谷山さんのウェブサイトをご訪問ください。

私のヨークシャー : http://www.h7.dion.ne.jp/~herriot/