JAMES HERRIOT'S YORKSHIRE (1979)
この本はヘリオット先生の最大のベストセラーとなりました。
ヨークシャー・デイルズ北部からヨーク平原、ノース・ヨーク・ムーアそしてヨークシャー沿岸地方という、いわゆる「ヘリオット・カントリー」を、ヘリオット先生の愛情に満ちた叙述、とデリー・ブラッブスの美しい写真で紹介しています。
献辞はアルフ・ワイトの孫たち、ジミーの息子のニコラスとロージーの娘のエマにに捧げられています。
この本は他のヘリオット先生の著作と異なり、ヨークシャー地方のガイドブックです。
と言っても単なるガイドブックではなく、ヘリオット・サーガのエピソードにあふれたヨークシャーの写真集、と言うべきでしょうか。
ご存知のようにヘリオット・サーガはどこまで本当の話でどこからが虚構なのかわかりません。しかし、この本に出てくる地名はすべて実在のもので、その中に虚構のヘレンやら犬のサムやらが登場するのですから、また一段と話はややこしくなるのですが。^^;
ヘリオット先生はこの本の企画を聞いたとき、息子のジミーに相談しました。しかし、ジミーは乗り気ではありませんでした。それどころか、「スウェイルデールの豚臭い田舎を紹介した本なんて、一体誰が興味を持つんだ?僕たちにとっては想い出にあふれた素晴らしい場所だけど、他の人が魅力を感じるなんて考えられないね。忘れろよ、そんな話。売れないよ!」とけちょんけちょんにけなしてしまったようです。
ところが実際に出版してみると、今までのどの本よりも売れてしまい、ジミーはその著書、The Real James Herriotの中で、自分の不明をしきりに嘆いております。
また、写真家のデリー・ブラッブスを選んだ経緯も、相当とぼけたものだったようです。
なにしろ、ヨークシャーの電話帳を手に取り、「写真家」の欄の一番最初に載っていたのがデリーだったから、つまりBrabbsという苗字は、アルファベット順に掲載する電話帳の一番最初の写真家だったから、という単純な理由だったのですから!いかにも英国らしい話ですねえ。しかし、その選択はまことに的を得たもので、ヨークシャーを知り尽くしたブラッブスの美しい写真は、このガイドブックの成功の大きな要因となったのでした。
なお、英国BBCのTVドラマ"ALL CREATURES GREAT AND SMALL"でヘリオット先生役を演じたクリストファー・ティモシーが案内役となったビデオ版もあるそうです。
ヘリオット先生の著作の中では、最後まで邦訳が出なかった本作ですが、2004年の7月に、ついに日本語バージョンの「私のヨークシャー」が出版されました。
バーネット作の「秘密の花園」に魅了されてヨークシャーを訪れた谷山幸子さんが、なんと自費出版してくださったのです!版権の関係で、デリー・ブラッブスの写真は使われなかったようですが、ヨークシャー観光局の素晴らしい写真、Pat Bellさんによる絵、訳者の谷山幸子さんによる詩情あふれるイラストも満載されており、オリジナルにまさるとも劣らない素晴らしいヨークシャーのガイドブックになっております。
この「私のヨークシャー」ご興味のある方は、下記の谷山さんのウェブサイトをご訪問ください。
私のヨークシャー : http://www.h7.dion.ne.jp/~herriot/
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