William Morris

1834 - 1896



ウィリアム・モリスは、19世紀の英国で活躍した画家であり、工芸デザイナーであり、作家であり、詩人であり、会社経営者であり、社会主義運動家です。モリスの多彩な業績の中でも、昨今はアーツ・アンド・クラフツスタイルの装飾デザイナーとしての認知度が高くなってきました。

彼のデザインは、英国のみならず世界中のファンに愛されていますが、特に日本人にはファンが多いようで、私の周りにも多くの熱烈なモリス・ファンがいます。理由はいろいろあると思いますが、やはり日本人が古来から愛してやまない花鳥風月の自然がモリスのデザインモチーフになっているからではないでしょうか。


モリス商会の壁紙

1861年4月11日に、ウィリアム・モリスは「絵画・装飾彫刻・家具・金工の美術職人集団」、モリス・マーシャル・フォークナー商会を設立しました。
この通称「モリス商会」設立2年目から始められた壁紙のデザインは、やがてモリス商会の主力事業に育っていきます。花や植物をモチーフにした壁紙は、華やかなものから落ち着いたものまで、様々なデザインが製作されましたが、どれも一目でモリスの作品と分かる特徴を持っています。
壁紙のデザインこそは、モリスのパターンデザインの才能がもっとも発揮された分野と言えるのではないでしょうか。1世紀以上を経た今もなお、多くのファンの心を捉えています。



アーツ・アンド・クラフツ運動ゆかりの場所

英国には、ウィリアム・モリスやアーツ・アンド・クラフツ運動ゆかりの場所がたくさんあります。
新婚時代に住んでいたケント州ベクスリーヒースのレッドハウス、大好きだったオクスフォードシャーの別荘ケルムスコット・マナー、ケルムスコット・プレスの所在地であり、ロンドンでのモリスの住居でもあったハマースミスのケルムスコット・ハウス、生地ウォルサムストウのウィリアム・モリス・ギャラリー、モリス商会が内装を手がけたワイトウィック・マナー、相棒のフィリップ・ウェブ設計によるアーツ・アンド・クラフツスタイルのショーケースとも言うべき住宅、スタンデンなどなど、それらを訪ねる旅行も楽しいものです。



アーツ・アンド・クラフツ・スタイルのステンドグラス

モリス商会の発足当時の大切な仕事は、ステンドグラスの製作でした。ゴシックリバイバル全盛の当時、けばけばしい色彩のステンドグラスが多かった中、ナチュラルで新鮮な色彩で登場したモリス商会のステンドグラスは、大きなインパクトを与えました。
英国内には、モリス商会製作のステンドグラスのある教会が、たくさんあります。
また、他のアーツ・アンド・クラフツ・スタイルのステンドグラス作家たち、ヘンリー・ホリデイやクリストファー・ホール、またその弟子となるルイス・デイヴィス、カール・パーソンズやポール・ウッドラフ、エドワード・ウーアたちがデザインした窓を見るのも大きな楽しみになっています。