VETS MIGHT FLY (1976, Michael Joseph Ltd.)


この本では、空軍入隊後、ロンドンの基礎訓練、ヨークシャーのスカーバラの初等訓練、シュロップシャーでの強化合宿までの時期のエピソードが収録されています。まだ実際に空を飛ぶところまではいっておりません。

とは言うものの、軍隊での訓練そのものに関するエピソードは少なく、ほとんどのエピソードはダロウビー時代のものであり、空軍の訓練を通してそれらの思い出にひたる、という内容です。

邦訳本は「ヘリオット先生のおかしな体験(集英社文庫)」で、そこに収められていないエピソードはオムニバスの「ドクター・ヘリオットの愛犬物語(上・下)、集英社文庫)」に収録されているものが多く、未翻訳のエピソードは4編だけです。下記にVETS MIGHT FLYの各章の概要をご紹介します。
内容 邦訳
1 空軍に入隊してロンドンでの最初の訓練、死ぬほど走らされる。ある晩、ダロウビーの夢を見る。デイキン老人の老牛ブロッサムが売られていくことになったときのこと。つらい気持ちで牛買い人のドドソンに彼女を引き渡す。しばらくするとブロッサムはデイキン老人の元に帰ってきた。彼はブロッサムにびた一文借りはないと言い、もうブロッサムを売ることはやめて、子牛を数匹育てさせることにした。夢から覚めてまたロンドンでの厳しい訓練。なぜブロッサムの夢を見たかわかった。ヘリオットも家に帰りたいのだった。 おかしな体験:第1章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
動物物語:第7章 (集英社文庫、大熊栄訳)
2 ロンドンの霧で、ハルトン侯爵のことを思い出す。彼は農夫と一緒に農作業するのを好む、貴族らしくない貴族だった。彼の家畜が怪我をすると、プロパミディンと言う薬を塗ってもらいたがるが、どうしてもその名前を発音できない。牧夫頭のチャーリーだけがそれらしい発音をするのだが、それさえプロポパミドと間違っている。ある早朝、ハルトン卿が大切にしている雌豚が子宮脱をおこし、往診に行く。苦心惨憺、なんとか治療完了したとき、ハルトン卿は朝食を自ら作って持ってきてくれたのだった。 おかしな体験:第2章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
3 子供のころ、ヘクター・マクダロック先生という屈強な歯医者さんに力任せに治療されたおかげで、いまだに歯医者が怖くてしょうがないのに、空軍の検査で引っかかり、抜歯をすることになった。担当医はマクダロック先生そっくりの巨漢で、情報通の同僚によれば「殺し屋」の異名をもつとのこと。噂どおり凶暴な歯医者で、のみとかなづちで歯をたたき出される。抜歯を終えて部屋を出る際に「私も同じ方法で歯を抜いたことがある」と「殺し屋」に告げる。「お前も歯医者か?」と聞かれたので、「いいえ獣医です。」と答えた。 おかしな体験:第3章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
4 ラムニー夫人はビクトリア朝時代を髣髴とさせる美女。彼女の飼っているボクサー、セドリックの「空気が問題」と電話がかかる。早速往診してみると、セドリックはのべつまくなしおならをする犬であることがわかった。薬を与えたが、事態は悪くなるばかり。パーティでゲストに挑みかかるわ、交配させようとすると相手の雌ボクサーに嫌われてしまうわ、どうしようもない。ヘリオットは、セドリックを庭師のコン・フェントンに与え、もっと上品な犬を飼うことを進言する。コンは喜んでセドリックを引き受ける。実は、コンは子供のころのアデノイドの手術のせいで、鼻がきかないのだった。 愛犬物語:下巻第3章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳)
5 ウェズリー・ビンクスはダロウビーで一番の悪ガキ。ヘリオットを目の敵にしていて、爆竹を投げ込まれたり、地下室の鉄格子をはずして墜落させたりと、ろくなことをしない。あるとき、ウェズはデュークという名前の犬を連れて診療所にやってきて治療をしてくれという。診断の結果はジステンパー。薬代を稼ぐために、ウェズは急に模範少年となって一生懸命に働き始める。しかし、ジステンパーは進行してしまい、結局はデュークを安楽死させるしかなかった。町の警官はウェズは誰も好きにならなかったと言うが、ヘリオットは彼が唯一デュークをかわいがったことをしっていた。 愛犬物語:下巻第4章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳)
6 英国空軍の食事は、その時代としてはまともだったが、スケルデール館の食事にはかなわない。唯一の例外はトリスタンの作った食事だった。ホールさんが1週間留守をする間、シーグフリードはトリスタンにコックを命じた。彼は来る日も来る日もソーセージのマッシュポテト添えしかつくれなかった。ビリングスさんの農場で、牛がばたばた倒れる。原因がなかなか分からなかったが、餌のミルクに、角を落とすときに使うアンチモニーが落ちてしまうことが原因と分かった。トリスタンの食事もこれと同じぐらいひどかった。 おかしな体験:第4章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
7 入営するときに持ってきた「獣医学辞典」の「去勢」の欄を読んでいたら、ロリー・オヘイガンと豚の去勢のことを思い出した。彼と冗談を言っているときに誤って指を切ってしまい、人差し指は大きな包帯の塊になってしまった。その帰り道、ある車のドライバーに呼び止められる。彼の犬が喉にボールを詰まらせてしまったのだ。スケルデール館で、ヘリオットがどこにいるか聞いたらしい。顎に手を当ててボールを押し出し、事なきを得た。後日、「指に包帯をした親愛なる獣医さま・・・」という書き出しの感謝状が届いた。 おかしな体験:第5章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
8 英国空軍に入隊し、ロンドンでの初期訓練の毎日。激しい運動のせいでばてまくっていた。その上、汚い豚小屋掃除までさせられた。ある晩、3人の仲間と一緒に映画を見に行くことになった。上映時間までに映画館に入りたかったので、夕食の際に最前列で配給を待っていると、「後で特別食を出してやるから」と食器洗いに徴用されてしまった。コテッジ・パイとチップスで汚れた大量の食器をひたすら洗い、見るのもいやになる。その仕事が終わったとき出されたご褒美は、なんと二人前のコテッジパイとチップスだった。 未訳
9 ヨークシャーのスカーバラでの訓練が始まった。その寒さに改めて驚き、ダロウビーで迎えた初めての冬を思い出した。ストーキル老人は薄着でヘリオットを出迎える。びっこになった牛を追いかけているうちに、汗をかき始め、寒さを感じなくなる。このとき老人の薄着の理由が理解できた。子豚の捕まえ方、気性の荒い牝牛の扱い方、雪の丘の登り方、学校で教わった知識はほとんど役に立たない。ストーキル老人は12歳で教育を終えたのに、実際的な知識に満ちており、ヘリオットは自分の未熟さを悟るのだった。 未訳
10 さすがの軍隊もクリスマスの日には雰囲気が変わる。ダロウビーでのあるクリスマスを思い出した。エインワース夫人の家に時々やってくるデビーと言う名前の野良猫がいた。彼女はつかの間の安楽を味わいに来ているのだった。あるクリスマスの朝、エインスワース夫人宅から電話、往診。子猫を連れたデビーが死にかけていた。デビーの死後、子猫はバスターと名づけられ、その家で飼われることになった。1年後、バスターはボールを拾う美猫になっており、夫人がもらった最高のクリスマスプレゼントとなった。

おかしな体験:第6章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
猫物語:第10章 (集英社文庫、大熊栄訳)

11 ある金曜日の午後、突然訓練が中止になり、夜まで時間が空いた。バスの時間を調べると、どうにか夜までにスカーバラとダロウビーを往復できる。宿舎を脱走するも、訓練中の伍長に見つかってしまう。しかしこの伍長はグラスゴー出身、故郷訛が幸いして目をつぶってもらい、ダロウビー行きのバスに乗り、ヘレンの元へ急ぐ。ヘレンは出産予定日を2週間後に控え、おなかが大きくなっており、ヘリオットは訓練で痩せてしまい、お互いに驚く。ヘレンに卵とチップスの料理を出してもらうが、何よりのご馳走に思えた。 おかしな体験:第7章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
12 空軍の二等兵は木で鼻をくくったような扱いをされる。しかしダロウビーでさえ、そんな扱いを受けたことは何度もあった。例えば馬の調教師、ビーミッシュ。馬はシーグフリードの担当だったが、彼が不在のためビーミッシュの厩舎に往診に行く。散々馬鹿にされた上に、馬に蹴られてしまう。そんなとき、ビーミッシュがエリック卿から預かっているアルミラと言う馬が呼吸困難に陥る。ヘリオットは蕁麻疹と診断し、アドレナリンの注射で直してしまう。ビーミッシュは「馬くさくない医者でも馬は治せるんだな」と言うのだった。 おかしな体験:第8章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
13 スカーバラのグランドホテルで歩哨をしていたとき、あまりに退屈で、ベイルズさんのシェップのことを思い出した。ベイルズさんの農場の牛、ローズが原因不明の胃腸障害を起こしたので往診したとき、シェップがいきなり耳元で大声で吠えた。彼はこっちがぼーっとしているときにひそかに近寄り、耳元で「わぁぁぁん!!」とやるのが楽しみだったのだ。ローズは、糖蜜を混ぜた水で胃洗浄した次の日元気になった。しかしベイルズさんは、それは郵便屋のジムのアドバイスどおり走らせまくったからと言う。むしゃくしゃしたヘリオットシェップの耳元で大声で怒鳴り、うさを晴らした。 愛犬物語:下巻第6章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳)
14 また午後から訓練がなかったので、軍隊を抜け出してダロウビーのヘレンに会いに行く。自宅に着くとヘレンの父親が「息子が生まれた」と告げる。あわてて産院にでかけ、生まれたばかりのジミーを見ると、とても変な顔をしている。助産婦にそのことを告げると、「生まれたばかりだから当たり前」、と思い切り怒られる。そのとき、子供が生まれたときもらえる休暇について悪魔的なアイデアが浮かぶ。軍に報告するのは2週間後にしよう。そのころにはヘレンも退院し、家族三人で過ごせるからだ。これは大成功だった。 おかしな体験:第9章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
15 難産の牛の助産にくたびれ果てて、「狐と犬」亭に一杯飲みに立ち寄る。常連のクローズ老人の連れているシープドッグ、ミックを見るとさかさまつげになっていて痛そうだ。手術をしないとなおらないと老人に告げるが、彼は「外で寝るもんで目に風邪を引いたんだべ」と、要領を得ない。常連のテッドが他の常連と話し合い、ミックを手術することになった。常連が大勢バンに乗り込み、ミックを連れて診療所にやってきて手術実施。翌月、「狐と犬」亭に寄ってみると、ミックの目は全快していた。老人は最後まで要領を得ない。 おかしな体験:第10章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
動物物語:第6章 (集英社文庫、大熊栄訳)
愛犬物語:下巻第7章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳)
16 冬のスカーバラ、厳しい寒さの中での訓練で風邪をひく人が続出する。ヘリオットも体調が悪かったが、病人の申請を出すとつらい行列をしなければならないので必死に耐える。訓練は本当に大変だった。中でも大変だったのが、10種類の運動の最後に大声を上げて飛び上がるマスゲームの訓練。大声を出すのが苦手なクロマーティはいつも上官に怒られていたが、必死に練習する。いよいよマスゲームの本番の日。クロマーティは完璧な絶叫を上げるが、タイミングが早すぎてマスゲームが滅茶苦茶になってしまう。 未訳
17

ダロウビーでのストリキニーネによる無差別連続殺犬事件が発生した。1週間で7匹も犠牲になる。ストリキニーネを誤って食べてしまい、背中を弓なりに伸ばし四肢を硬直させた犬が次々と診療所に連れてこられる。その仲の一匹がシェパードのファーガスだった。彼はジョニー・クリフォードの盲導犬で、とても性質の良い犬だった。ジョニーはファーガスが死んだらどうなるかわからない。ヘリオットは致死量を超えた麻酔薬を打ち、つきっきりで看護する。翌朝、ファーガスは深い睡眠から目覚め、ストリキニーネ中毒を克服し、これによってジョニーも救われたのだった。

愛犬物語:下巻第8章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳)
18 ベック未亡人は、資産を持っているくせに「私は貧しい未亡人・・・」と言うのが口癖。猫のジョージナの避妊手術を10シリングで請け負わせられ、その上、ジョージナの送り迎えまで頼まれてしまう。ジョージナをトリスタンと迎えに行くが、なかなかつかまらず大捕り物帳になってしまう。しかも車の中でもうんこはするは、箱から脱走するは、で大騒ぎ。デブ猫のため手術も大変だった。送り届ける途中も麻酔が覚めかかり大恐慌。しかも、猫を受け取ったベック夫人は「支払いは抜糸のときに」、と先延ばしするのだった。 おかしな体験:第11章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
19 皮肉なことに、厳しい冬が終わり素晴らしい季節が始まる5月になって、ようやくスカーバラでの訓練が終了した。6ヶ月前の頼りない新兵たちは、屈強な兵隊となり、単なる二等兵から上級飛行兵に昇進した。それによりヘリオットの収入も倍以上改善された。スカーバラの町を行進してグランドホテルの前を通過したとき、いつか必ずこの豪華なホテルを再訪することを心に誓う。そして何年か後には、本当にそのビクトリア朝風のホテルのレストランでヘレンと食事をすることになったのだった。 未訳
20 空軍は猥褻な話に満ちていた。教会の主教の息子さえ、卑猥な話のとりこにしてしまう。しかし、北ヨークシャーの農夫は性的な話を恥ずかしがるのだった。診療所に電話をかけてくるときも、女性が電話を取ると、性的な要素をぼかして話をする。ホップスさんもその一人で、発情の遅れている牛の話を伝えれず治療の準備ができない。また、ピンカートンさんは彼のコリーのペニスをペンシルとしか表現できない。ギルビーさんは、あまりに堅物なので牛に急所を蹴られても、それを表現できない。農場での立ち小便も農夫たちには落ち着かない行為だった。 部分的に邦訳:愛犬物語:下巻第12章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳)
21 シーグフリードが、「旧友のステューイ・ブラナンに休暇を取らせてやりたいので、その間の代診をしてくれないか」、と頼む。ヘリオットは快諾し、ステューイの住むヘンズフィールドの町へ。同じヨークシャーでもダロウビーとは大違いのスモッグ漂う工業都市だった。彼の診療所で扱うのは小動物ばかりで、患者の飼主も貧乏人ばかりで、高い診療費は取れなかった。なにしろ薬壜まで子供たちに集めさせ、それを安く買い叩くぐらいなのだ。ブラナン家が休暇に旅立った次の日、交通事故でひどい重傷を負ったゴ−ルデン・ラブラドールが診療所に運び込まれた。 愛犬物語:下巻第9章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳)
22 重傷を負った犬、キムを手術し始める。ステューイの診療所には十分な薬剤や道具がそろっていないので、スペイン戦争の経験から、「膿に浸したままギプス」することにした。飼主のギラード夫妻は、サリー州在住だったが、キムが直るまでヘンズフィールドに滞在することになった。診療所の家政婦はホーロイドさんと言い、ユニークな人だった。ヨークシャー方言の言文一致でメッセージを残すので意味不明だった。例えば「微笑むハリーの梅毒(Smiling Harry Syphillis)」は、豚丹毒(Swine erysipelas)のことだった。キムの傷は悪臭を放っていたが、望みはまだあった。 愛犬物語:下巻第10章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳)
23 ヘンズフィールドでグレイハウンドレースの担当獣医を担当することになった。満腹の犬を失格にすると、レース場の場長に怒られる。しかしヘリオットは不正を許すわけには行かず、満腹の犬を次々に失格にして、さらに恨みを買うのだった。また「この犬は元気か」ときいてきたマフィアに元気だと答え、その犬が負けたときにも大いににらまれた。レース場ではたくさん敵を作ってしまった。キムの傷は膿の中に浸すことで、奇跡的に回復する。大昔の医者が「褒むべき膿」と言ったのは本当だった。ブラナン家も元気に帰ってきて、満足感に浸ってダロウビーに帰る。 愛犬物語:下巻第11章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳)
24 空軍の連中はよくどなるが、大声と言えばレン・ハンプソンにかなうものはいない。レンの豚の腸が破裂し、手の施しようがないがスルフォンアミドを処方する。その後、ささやくような声でしか話さないイライジャ・ウェントワースの去勢牛の診察に向かう。肝臓ジストマの薬とその宿主を退治する薬を与える。一月後、この二人にマーケットで出会う。レンは「あんたの薬は全然効かず、豚は死んぢまった!」と、大声で吹聴する。かたやイライジャは「あの薬は奇跡的によく効きました!」と、蚊の泣くような声で言うのだった。 おかしな体験:第12章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
25 グランヴィルに食事の招待を受けた。たまたま愛犬のサムの口に腫瘍ができたので、その治療とともにヘレンとグランヴィルを訪問する。ヘリオットは初めてグランヴィルの美人妻ゾーイにしらふで会うことができた。グランヴィルは庭に専用のバーを作った。そこで飲み始めると例によってきりがない。ニューカースルのインド料理屋に出かけようとするが、霧がひどくて断念。ヘリオットの苦手なサヴィロイソーセージのホットドッグのディナーとなる。過度の飲酒と苦手な食べ物で、ヘリオットはまた正体をなくしてしまう。 おかしな体験:第13章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
26 シーグフリードの行動はとても矛盾している。ヘリオットのすることにいちいち反対するくせに、実は同じことをしている。プラスチック製の注射器を彼はすごく良いと言い、ヘリオットに薦める。しかし彼も使って大失敗しているのだが。また、年金暮らしのベイリーさんに対して無料で治療すると「気前が良すぎる」と怒るくせに、彼が診察したときには薬も余計に出し、お金まで与え、家まで送ってしまう。牛の注射を首にするか尻にするかで馬鹿げた議論をするが、実は彼もヘリオットの意見を取り入れたりしているのだ。 おかしな体験:第14章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
愛犬物語:下巻第13章 (集英社文庫、畑正憲/ジェルミ・エンジェル共訳
27 スカーバラを出てシュロップシャーで強化合宿をしていたとき、農家の手伝いを求められた。ヘリオットは早速志願し、エドワーズさんの農作業を手伝うが、慣れていないのでうまくできない。エドワーズさんは「力じゃなくて正しいやり方を知っているかどうかだ」と言う。ある夕べ、彼の牝牛が難産になる。苦労して取り組む彼を見かねて、ヘリオットは助産をし、瞬く間に子牛をとりあげてしまう。いぶかしむエドワーズさんに、獣医であることを告げ、「要は力ではなくて、正しいやり方を知っているから」と言うと、大笑い。 おかしな体験:第15章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)
28 シュロップシャーを離れ、いよいよ飛行学校に入学することになった。列車で移動するときに、うとうとしてしまいダロウビー時代の楽しい夢を見る。ヘレンとのヨークシャーデイルズでの楽しい往診、素晴らしい自然。ウィンザーの飛行学校に着くやいなや恐ろしい注意事項。「認識票を身につけていないと死んだとき誰が誰だか分からない」とのこと。遊びはもう終わり、これからが本番であることを悟った。 おかしな体験:第16章 (集英社文庫、池澤夏樹訳)