2001年8月13日 (月曜日)
ヨークシャーからノーフォークへ
Harrogate - York - A1 - Heacham - Cromer - Coltishall


マジェスティックの朝食は、ビュッフェスタイル。
今日はちょっと空腹なので、ベーコン、マッシュルーム、ベイクドトマト、スクランブルエッグ、フルイングリッシュブレックファストに近いものを選んでしまう。妻はシチュードフルーツ、と軽目の朝食。

朝食後、チェックアウトする前に、ハロゲイトの市街を散歩に出かける。
庭園側の出口から外に出ると、そこには昨日以上にロールス・ロイス、それもビンテージもののロールスがずらりと並んでおり、壮観だった。このホテルに来る客層って、いったいどんな客層なんだろう。


Betty's Tea Room
とりあえず昨夜YS君に案内してもらったベティズ・ティールームへ向かう。
ビクトリアン時代からエドワーディアン時代に向かう時代の建築らしく、アール・ヌーボー調の装飾が美しい。9時前だったので、まだ営業開始前で、パンなどの食材の搬入をやっている。
だが、ハロゲイトの主のようなおばあさんたちは、お構い無しに入っていき、新聞なんかをとって勝手に陣取っている。「あなたたちもいらっしゃい。さもないといい場所がなくなるわよ!」と誘われてしまう。

店内に入ると、このおばあさんたちと負けずおとらず高齢のウェイトレスがやってきて、「冷たい飲み物ならすぐできるけど、熱い飲み物は20分くらいかかります。どうなさいます?」と聞く。20分ぐらいだったら、待つことにした。

ハロゲイトは、本当に上品な女性の多い町である。ちょっと年齢層が高い、と言うか、ほとんどシニアクラスばかりなのだが、、、、。でも、昔はさぞや、と思わせる方が多い街である。実際には10分少々で紅茶が出てきた。妻はアールグレイ、私はお店のお勧めブレンド。英国にきて、初めて心の底からうまい!と思わせる紅茶に出会った。


マジェスティックに駐車中のロールス・ロイス軍団。右はベティズ・ティールーム。アール・ヌーボー調の建物が美しい。

ベティズで美味しい紅茶を堪能した後、公園の坂を下ってすぐのところにある、Farrah'sという、ファッジやタフィで有名なお菓子屋へ行ってみた。
このファーラーズ、YS君ご推薦の店である。品揃えが多くて驚いたが、とりあえずこの店のオリジナルのファッジとタフィを買った。アンティークショップ街を眺めながらホテルに帰り、チェックアウトする。ここのホテルは、バウチャーをあらかじめ買ってあったので、電話代しかない。3ポンド弱だった。


タフィとファッジで有名なファーラーズ、そしてその近くの花壇。ハロゲイトはそこらじゅうが花盛りだった。


A59
ホテルを出たらすでに11時近かった。急いでヨークを目指す。
途中、英国に来て始めて、鉄道の踏み切りに遭遇した。列車が通過するまで、10分以上待たされた。なお、英国の流儀では、踏み切りで一旦停車はしないようだ。どの車もいったん停車せずに、ずんずん走っていく。

途中、川景色が素敵だということで知られる、ネアズボロを通ったはずなのだが、それらしき風景に気がつく前に通過してしまったようだ。そんな小さな街、ということらしい。
ヨークに向かう途中で渋滞に遭遇。英国に来て、初めての渋滞らしい渋滞。今日はよく初物に出会う日である。工事のため片側通行で、30分ほどロスタイムした。


開かずの踏み切り、そして渋滞。(ドアミラーに車の列が写っています。)


York
ヨークに近づくにつれてミンスターが見えてくるのだろうと想像していたのに、なかなかミンスターは見えてこない。しばらく住宅街を走って市街地に入り、ようやくミンスターが見えてきた。

「P」のサインをたどって駐車場へ。駐車場を出るとすぐに、ヨーク名物の城壁にぶつかる。そこをくぐって、公園を抜けてヨーク市街地へ。ミンスターはさすがに大きい。近づくに連れてその壮麗な建築のすごさがわかってくる。「なるほどー、これかぁ、、、」って感じだった。

突如、ミンスターの足元で、吹奏楽の演奏が始まる。時計を見ると12時ジャスト。これは毎日12時に演奏するブラスバンドらしい。開かずの踏み切りやら渋滞やらで遅れてしまい、気がついたら12時になってしまっていた。
英国のブラスバンドは、映画のBRASS OFF!でもそうだったが、金管楽器ばかりで構成される。サクソルン属という同じ構造の楽器のアンサンブルなので、音がとても調和が取れている。そういや、あの映画の舞台はヨークシャーだった。ちょっとビターな風味の良い映画だった。

ミンスターの中に入ってみたかったが、本日のスケジュールを考えると難しい。後ろ髪をひかれるように、ヨーク・ミンスターを後にして、ヨークの旧市街、シャンブルズをぶらつきながら、駐車場に戻る。


ヨーク・ミンスター、そして12時に演奏を始めたブラスバンド。


A1 (Wetherby - Newark-on-Trent - King's Lynn) - A148
ヨーク市内はややこしい。
A1道路方面へ走っていったつもりなのだが、道を間違えたのか、どこにいるのかわからなくなる。英国では珍しい体験である。試行錯誤しているうちにウェザービィの標識を発見した。やれうれしや、と、田舎道を50マイル強で飛ばす。やがてA1道路にあっけなく合流した。

A1は途中でM道路に化ける。このM道路区間は車線も広くなり、スピードも上がる。ガソリンが1/4を切ってきたので、途中で給油。

順調に流れていたA1だが、Newark-on-Trent手前10マイルぐらいから、大渋滞になってしまい、待てど暮らせど進まない。
A17との分岐で原因が分かる。そこのラウンドアバウトがさばきれなくなっている。ラウンドアバウトの問題点は、ある程度以上の交通量になると、大渋滞が発生することにあるようだ。結局、30分以上のロスタイムとなってしまった。

A17に入ってからは快調だった。片側1車線の田舎道なのだが、空いているので、60マイル/h強でがんがん飛ばせる。それでもこちらを抜いていく車が多いのには驚く。中にはいっぺんに3台抜き、4台抜きをする豪傑もいる。英国人は普段は紳士的なのだが、ハンドルを握ると人が変わるらしい。

キングス・リンを目指しながら、空腹感に襲われる。渋滞のせいで、昼飯を食べていないのだ。
たまたまリトルシェフとバーガーキングのあるパーキングがあったので、そこで休憩することにした。バーガーキングでチキンロイヤルミールを頼む。チキンフライのホットドッグ風、フレンチフライ、コークで4.5ポンドぐらいと、ちょっと高い。ここの店員のおにいちゃんはなまりがきつくて、言っていることがよく分からなかった。


Heacham
キングス・リンを超えてA148に入る。
A149に入り、ヒーチャムを目指す。Norfolk Lavenderがお目当てである。時間は午後5時をまわり、ちょっと日差しが柔らかくなってきた。よく晴れた気持ちのよい夕べになりそうだ。道も空いているので、飛ばしまくる。

ノーフォーク・ラベンダーについたら5時半だった。
だめもとで駐車場へ行くと、案の定、閉園の看板が出ていた。それでも人影が見えるので、ショップへ行ってみると、ここはまだ開いていた。大渋滞2発の遭遇で、もうショップには間に合わないだろうと思っていたが、ラッキーである。

このノーフォーク・ラベンダー、最近は日本でもよく見掛けるようになったラベンダーグッズの総元締めだが、本店はこのヒーチャムにある。
そこらじゅうラベンダーの香りですがすがしい。我々が最後の客だったが、追い出しもかからず、気持ち良くショッピングが出来た。
ガーデンはすでに閉園していたが、ガーデンの外にもたくさんラベンダーは咲いており、それを見ることが出来たので、満足である。

さて、本日の宿泊地、コルティシャルのノーフォークミードに電話をしなければいけない。かなり到着時刻が遅れそうなのだ。ショップのスタッフに公衆電話のありかを聞くが、ショップ内にも、近くにもないとのこと。しょうがない、途中で見つけよう。


ノーフォーク・ラベンダーにて。右はまだオープンしていたショップ。


A149 Hunstanton - Thornham
公衆電話を探しながら、A149をドライブ。
なにしろスピードが出ているので、「あ、電話ボックス!」と思ってもなかなか車を止められない。ハンスタントンを過ぎて、しばらく行ったところにある小さな村、ソーナムの公衆電話が止めやすかったので、そこで車を脇に寄せる。

ノーフォーク・ミードに電話をすると、若いおねえさんが出る。

「日本から予約した黒顔羊って言いますが、、、」

「あ、こんにちは!承っていますよ。今夜お泊りになる方ですよね!」

「あのー、今ハンスタントンの近くにいるんですけど、必ず行きますから、キャンセルしないでくださいね。で、ここからだったら何分ぐらいでそこに行けるでしょうか?」

「そうですねぇ、45分ぐらいかしら?」

(うそつけ、実際には1時間30分以上かかったぞ。^^;)

「じゃあ7時ぐらいには到着します。」「ディナーはどうします?」

「えっと、今のところ、その予定はないんだけど、、、、。」

「そうですか、でも気をつけてきてくださいね!お待ちしてます!」

ガシャ。通話料金は20ペンスだった。

食事は、ここのところ、重いものばかり食べていたので、たまには軽くパブですませたいな、などと考えていたのだ。


ソーンハムの村で、ノーフォーク・ミードに電話をかける。

その後、ひたすらA149の北海沿いコーストラインを走る。
小さな可愛い村が次々とを通りすぎていく。このあたりの家は、コッツウォルズ風の石積みではなく、丸石を漆喰でかためたような壁が特長のようである。英国の各地方の住宅建築のあり方なんかを比較したらおもしろいね、いい研究課題になりそうだね、などと妻と話す。


Brancaster
ブランカスターで「ビーチ」の標識を見たので、左折し、海岸へ向かう。5分ほど走ると、浜辺に到着した。雲間から夕日が差し、北海はどことなく寂しげな雰囲気である。
そう言えば、ジャック・ヒギンスの名作、「鷲は舞い下りた」の舞台は確かこの辺だったのではなかったっけ、こんな風景の中をシュタイナ少佐と英軍の戦いが繰り広げられたんだろうな、としばし想像を逞しくする。私がぼーっとしている間に妻は北海の貝殻を拾い集めた。
夜7時近くなっても、どんどん人が浜辺に繰り出してくる。日が長いというのは素晴らしい。


ブランカスターの浜辺。雲間から射す光が美しかった。妻は北海の貝殻収集。


A149 (Wells-next-the-Sea - Cromer)
Wells-next-the-Sea, Blakeneyを淡々と通過していく。この間、海岸は遠くなったり近くなったり、夕日の中を素晴らしい風景が展開する。この地方は有名な観光地ではない(少なくとも日本では)かもしれないが、その風景の素晴らしさは、昨日のヨークシャー・デイルと双璧だと思う。
Cley-next-the-Seaという村に入ると、懐かしいような光景が広がっていた。コーストラインの中でも特に可愛く小さな村だったが、一度泊ってみたいような気持ちを起こさせる村だった。Sheringhamを抜け、Cromerに入る。A149の中で一番大きな街だと思う。観光客がたくさん歩いている。海水浴だろうか。



クローマーの街を通過中。夕映えに輝く街が美しい。


Coltishall
North Walshamを過ぎたところで「B1150 Norwich, Coltishall」の表示があったので、右折する。
暮れなずんできたB級道路を走っていると、ランサム・サーガに登場する地名が次々に出てくる。感激しているうちに、ようやくコルティシャルの村に到着した。

The AAのウェブサイトで、ノーフォーク・ミードを検索したとき、「教会の横の道を入ってすぐです。」となっていたので、まず教会を探すが、なぜか見当たらない。うーむ、今日はスムーズにいかない。
行ったり来たりしてノーフォーク・ミードを探す。もう午後8時近くなり、かなり日が落ちてきた。今来た道のさらに一本奥に入って、ようやく教会を発見した。
完全に私の見落としだった。教会の横を見ると、確かに道があるのだ。そしてそこには、ノーフォーク・ミードの看板も出ていたのだ。ほっとしながら、緑の小道を抜ると、ウェブサイトで見たとおりの、煉瓦造りのノーフォーク・ミードホテルが建っていた。

フレンドリーなおねえさんが出迎えてくれる。
「ディナーですけど、いかがですか?」と、聞いてくれたので、「じゃあ、お願いします。8時半。」と頼む。到着が遅れてしまったので、夕食はどうしようかなあ、パブに出かけるのもおっくうだなあ、と考えながら走ってきたところだったのだ。

このホテル、インテリアの趣味が良い。
ラベンダーの香りがどこからか漂ってくる。年季の入った家具と調度品がなごめる雰囲気をつくっている。今回泊まったホテルの中で、そのキュートさは一番だと思う。

ポロからヘビー級に重くなった荷物を降ろす。「部屋まで運んでくれるようにポーターに頼めるでしょうか?」「ええ、もちろんですとも。うちのシェフはとても力持ちだから、大丈夫ですよ!」
何しろ全部で9部屋しかない小さなホテルなので、ポーターがいないらしい。奥からそのシェフさんが出てきて、荷物を運んでくれる。2階の奥の部屋だが、エレベーターなどない。シェフは涼しい顔でおもーい荷物を運び、チップを受け取ると、「じゃあ後でディナーを楽しみにしていてね!」と、階段を降りていったのであった。


ノーフォーク・ミードのラウンジにて。こじんまりとした部屋だが、趣味が良い。

我々の部屋は、このホテルで一番良い部屋をあてがってくれたらしい。
ホテルのブローシャーを見たら、この部屋が載っていた。つまり看板娘ならぬ看板部屋なのだ。部屋の前にはこのノーフォーク・ミードのロゴの入ったセーターを着たテディ・ベアがお迎えをしてくれているし、部屋の中でもその子の兄弟が、ラベンダーオイルを染み込ませたポプリとともに出迎えをしてくれている。妻は大いに喜ぶ。

バスルームも、絨毯張りで、素敵なバスアメニティである。大きなフレンチドアの向こうは、バルコニーになっている。18世紀末の建物なので、窓のしつらえなども、今のものとは相当違い、歴史を感じさせる。ゴージャスというよりラブリーという雰囲気の部屋で、こんな部屋に長逗留したら気持ち良いだろうな、と思わせる部屋だった。

エステ、アロマセラピーのメニューも部屋に入っていた。
妻が「明日の午前中、トライしてみたい」、というので、レセプションのおねえさんに聞いたら、12時まで予約が入っているとのこと。「チェックアウトは11時だけど、その後も荷物は預かりますから大丈夫ですよ。」とのこと。うーん、どうしようか、、、、。明日の気分次第だな。ここはノーフォーク・ブローズ、アーサー・ランサムゆかりの土地である。もし妻がエステをやっていても、私はいくらでも時間はつぶせる。


ノーフォーク・ミードのベッドルーム。テディベアとラベンダーの香りのポプリ。ブラスのベッド。

着替えをして、ダイニングへルームへ降りていく。
小さなレストランだが、なかなかにメニューが凝っている。そう言えばここはThe AAの評価では赤ロゼット1個ついていた。

スターターは、妻がクローマー産の蟹、私は北海産サーモンの自家製スモークと、やはり海に近い場所ならではの料理を試してみることにした。メインは妻がビーフの二色ソース添え。私はカレイのケイジャン風にした。これは辛いだけでなく香りが素晴らしい一品だった。ガーニッシュはベイクド・ポテト、ベイクド・スピナッチ、ベイクド・ストリングビーンが、どーんと出てきた。
デザートは妻がベイクドピーチとバニラアイスクリーム、そしてコーヒー。私はサマープディング。いろんな種類のベリーでできており、酸っぱさをクリームで包み込むとうまい。そして最後にモンクス・コーヒー。グレナディン入りで、コーヒーカップではなく、ガラスのゴブレットでサーブされた。

本日のディナーも美味だった。さっき荷物を運んでくれたシェフは、単なる力持ちではなく、繊細な料理も出来る、ちゃんとしたシェフだったのだ。

コーヒーは、英国的なインテリアのラウンジでいただく。JohansensやAlastair Sawday'sのホテルカタログがおいてあり、このホテルも載っていた。これらのカタログは、小さな良いホテルばかりが掲載されており、妻と「次にはここに行きたい、あそこに行きたい」と話す。

ディナーを堪能して部屋に戻り、入浴する。
シャワージェルはローズマリー。ハンドウォッシュはシトラス。バスフォームはラベンダー。それぞれの香りを一番効果のある用途に使っているようだ。うーん、よく勉強しているんだなあ。えらいなあ。心からくつろいでしまったよ、おじさんは。^^;

メールチェックそして写真整理と、定番の仕事を片付け、バルコニーに出て煙草を一服して空を見上げると、すごい星空だった。天の川を久しぶりに見た。


ノーフォーク・ミードのバスルーム。バスの足元の豚がかわいい。棚には素敵なバスアメニティ。
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