2001年8月10日 (金曜日)
イブシャムから湖水地方へ
Evesham - M6 - Lake District (Windermere, Bowness-on-Windermere)
起床はだんだん遅くなって、7時30分頃だった。
ジェットラグは完全に抜けているので、単に疲れが溜まってきているだけなのかもしれない。窓から外を見ると、素晴らしい快晴。ウースターシャーの緑の丘陵地帯が美しい。移動日にぴったりの天気になった。TVの予報でも、本日はとても暑くなる、と告げている。
朝食は昨日のディナーの際のレストランと同じ場所だった。
昨夜は暗く照明を落としてロマンティックな雰囲気を演出していたが、今朝は打って変わって明るい日差しがさんさんとさしこみ、別の場所で食べているような感じである。
フル・イングリッシュ・ブレックファストは、どのホテルで食べても、まあまあのものが出てくるので差があまりないが、昨夜のディナーで、このホテルの食事のクォリティにいたく感銘を受けたので、ア・ラ・カルトの朝食を試してみた。妻ははスモークサーモンの入ったスクランブルエッグ、私はキッパー・ヘリング。
妻のサーモン入りスクランブル・エッグ、生臭いいやな臭いがまったくしないと言う。ウェイターに聞いてみたら、自家製の薫製とのこと。そう言えば昨晩のあんこうも自家製のスモークだと言っていた。薫製はホテルのシェフが仕上げているのであろう。
キッパーは、軽くスモークした丸々としたにしんの塩焼きが、どーんと出てきた。見た目がアブラギッシュな割には上品な味だった。
ウッド・ノートンでの朝食。結構なお味でした。
9時にチェックアウト。
料金は料理とサービスを考えると、リーズナブルで大納得だった。観光地を外れているからだろうか。レセプションの横にショーケースがあり、そこにウッド・ノートン・ホールのお土産が展示してある。このホテルのシンボル、「ブルボンの百合」のリボンをしたテディ・ベアと、同じくブルボンの百合のパターンの入ったチョコレートを購入。
M5 - M6
ウースターシャーののどかな田園地帯を、M5を目指して西へ走る。
30分ほど走って、大きなラウンドアバウトに入ると、突然立体交差になり、下を見るとモーターウェイになっている。これがM5に違いない。最初はM5の入り口をミスってしまったため、ラウンドアバウトをもう一周する。無事、合流できた。
噂通り、M道路の流れは速い。一番左側が60マイル、真ん中が70〜80マイル、一番右側がそれ以上で流れている。慣れない場所での高速走行なので、慎重に走る。特に、バーミンガム付近、リバプール・マンチェスター近辺は車線も4つ以上になるし、分岐も出てくるので、道路標識を見落とさないように緊張した。
M5からM6に入り、ひたすら北を目指す。
走っている自動車は、ドイツ車、フランス車が多い。それもいわゆる大衆車クラスが多い。ポロやゴルフ、プジョーの206、フィアットのプントなど。日本車で目立つのは日産のマーチ。現地ではマイクラと呼ばれている。またトヨタのヴィッツの欧州バージョン、ヤリスも多い。BMWは飛ばし屋が多い。メルセデスは少ない。特にどでかいSクラスはほとんど見ない。
各国の車が入り乱れているのに比べて、英国車は少ない。ボクソールは多かったが、あれはオペルそのものだから、英国車と言っていいものかどうか・・・。強いて言えばローバーぐらいか。それでも時々ジャギュアが悠々とマイペースで走っていたり、古いトライアンフが結構なスピードで追い抜いていったり、犬を乗せたランドローバーが走っているのを見ると、英国だなぁ、と実感する。
あまり飛ばさずに、サービスエリアで3回休憩した。
スタフォード、チャーノック・リチャード、バートン・イン・ケンダル。どのサービスエリアも広大で、清潔である。妻の話によれば、女性用トイレには、花さえ生けてあったそうだ。また、どのサービスエリアにも必ずリトル・シェフがある。これは英国版ファミレスのようだ。興味があったが、朝の朝食が豪華なため、昼はちゃんとした昼食を摂る気がしないのでパス。
最後のSA、バートン・イン・ケンダルでは、初めてのセルフ給油も体験した。緑色のUNLEADED(無鉛)という給油パイプを燃料タンクに差込み、引き金を握る。支払いは、ペトロルステーションの売店に入り、「5番のスタンド!」と、それぞれの給油機の番号を言えば精算してくれる。30.38リットルで22.75ポンド。日本円に換算すると、1リットルあたり140円強と、北海油田を持っている国の割にはずいぶん高い。
M道路のサービスエリアにて。スナックを買い込みました。
その後、36番出口でM6を下り、A590でケンダル方面へ。
もうここまで来ると、地名表示だけで走っていける。大体の方向を大まかにつかんでおけば、交差点には必ず地名表示が出ており、Windermereと出ている方向に走ればOK。
のどかな道で、天気も良く美しい。のんびりと走っているつもりでも、メーターを見ると時速50マイル(80km)以上は出ているから驚く。スピード感のない道路である。
それにしても羊が多い。下を向いて黙々と草を食べている。妻と羊についてディスカッション。「この子達は、草を食べるしか能がないのだろうか。そして、毛を刈られて、人様に食べられてしまうしか能がないのだろうか。文句も言わないのだろうか。寂しい人生(羊生?)だなぁ。」などと、およそ役に立たないディスカッション。どの羊も、うな垂れてもくもくと草を食べている。前をきっとにんらんでいたり、空を眺めている羊は一匹もいない。
Windermere - Langdale Chase Hotel
そのうちに、いよいよウィンダミア湖の湖面が見えてきた。陽光を受けてきらきらと輝いている。
うーん、これがウィンダミア湖か!美しい!アーサー・ランサムの世界にいよいよ到着した、と思うとひたぶるに感動した。ランサムは英国の児童小説家で、小学生のころむさぼるように読んでいた。それが後年のアングロマニアを醸成するきっかけとなったが、その舞台は、この湖水地方なのである。
ほどなく、鉄道のウィンダミア駅の付近を通過。
今度はアンブルサイド(Ambleside)という表示にしたがって坂道をどんどん降りていく。The AAのウェブサイトで調べたホテルやB&Bが次々と現われる。ラウンドアバウトを右へ。この道路はほとんど緑のトンネル状態で、とてもすがすがしい。トラウトベックブリッジをわたって、湖岸を左に見ながら走っていくと、ラングデイル・チェイス・ホテルの看板が見えてきた。慌てて左折する。アザレアのブッシュを抜けていくと、目の前に堂々たる石造りのホテルが登場。到着は1時30分だった。ホテルは今日は敬老会でもやっているのか、上品なおばあちゃんがぞろぞろとホテルから出てくる。
ラングデイル・チェイス。真ん中の三角屋根の部屋が我々の部屋。ホテルからはウィンダミア湖が見える。
事務所みたいな雰囲気のレセプションでチェックイン。
「何かリクエストは?」と聞かれたので、そういや昼ご飯をまだ食べていなかったな、と思って「アフタヌーン・ティーって飲めますか?」と聞いた。「もちろんですとも!何時に予約なさいますか?」とのこと。2時半に予約をする。
ポーターがいないので、支配人代理みたいなおじさんに荷物を部屋まで運んでもらう。今日も3階、エレベーターなし。素晴らしい彫刻の施された階段をどんどん上がっていく。このおじさん、かなり息が上がっていた。^^;この部屋はバルコニー付きだった。バルコニーに出てみると、ウィンダミア湖がよく見える。早く予約した特権だろうか。インテリアはまずまずロマンティックな部屋。亜熱帯系の観葉植物が入っているが、ミスマッチだ。
ラングデール・チェイスのベッドルームにて。
その後、庭に出て散歩。風が強い。庭を修復しており、湖岸の庭には工事中で下りられなかったのが残念。それでもホテルのほとんどの場所から湖面が見える。陽光が湖面に反射してとても美しい。ドローイングルームやラウンジも探検する。建築はそれほど昔のものではないはずで、19世紀末の建物のはずだが、調度品は使い込まれたアンティークが多い。大小の油絵、昔の写真、手の込んだ彫刻の施されたファイヤープレースや家具など、見ていて飽きない。
ドローイングルームにて。アンティーク好きな人にはたまらないインテリア。
湖岸に臨んだラウンジにてアフタヌーンティー。3段のお皿に盛りつけた上品なものではなく、スコン、サンドイッチ、ケーキ類をまとめてどーんと大皿に盛ったカジュアルスタイルのアフタヌーンティーだが、その量にびっくり。酸味のきいたクリスプス(日本のポテトチップス)が、存外うまい。
ラウンジにてアフタヌーンティー。大盛りだった!
Bowness-on-Windermere
食後、ホテルを後にしてボウネス観光にでかける。
15分ほどでボウネスに入る。夏休み中ということもあって、ものすごい人出である。例によって「P」サインにしたがってパーキングを探すが、近いところはいっぱいで、結局かなり奥まで行ってようやく空きスペースを確保した。ランサム・サーガでは「ダリエン」あたりになるのだろうか。「こりゃボウネスまで歩くのが大変!」と思ったら、ムカデのようなバスが、パーキングの入り口に登場。やれやれ。ムカデバスに乗ってボウネスへ向かうことにした。
このムカデバスの中に面白いステッカーが張ってあった。(下記の黄色のステッカー)
犬を車の中に閉じ込めたまま、車を離れる人がいるらしく、「暑い車の中に入れておくと、犬は死にます。」という、非常に直截な警告だった。日本では「子供を車の中に放置しないように!」というのはよく聞くが、英国では犬のほうを大切にしているのだろうか?^^;
ムカデバスと「犬を車に閉じ込めないで」のステッカー
ムカデバスはボウネスに到着し、さっそく桟橋へ歩いていく。
日本ではほとんど見ることの出来なくなった、クリンカー張りの手漕ぎボートがたくさんあってうらやましい。とりあえず、その昔、アーサー・ランサムが湖にやってくると最初に行った儀式を真似て、両手を湖の中に入れて、「やってきたよ!」と湖に挨拶する。
このボウネス、ランサム・サーガでは「リオ」という名前で登場する。ツバメ号が最初にアマゾン号を追跡したときに、ジョンがジンジャー・ビアを買いに上陸したのが、この波止場だったんだなぁ、と感慨にふける。
白鳥や鴨がたくさん群れている。近寄っても逃げない。よほどいじめられたことがないのだろうか。
ボウネスの桟橋にて。クリンカー張りのボート。
まずはお約束通りのコースで、ピーター・ラビットのアトラクション、THE WORLD OF BEATRIX POTTERへ向かう。
まず「i」で行き方を聞く。最初のラウンドアバウトを左へ曲がる、と言われて、しばらく歩いていくが、いっこうにそれらしいものが見当たらず、あせり始めると、、、、、。あ、あったあった、かなりアンブルサイドよりで発見。なんということはない、さっきボウネスに入るときに入ってきた道沿いだった。
ミュージアムで10分ほどのビデオを見て、その後アトラクションへ。
ピーター・ラビットやその友達の人形が迎えてくれた。ピーターがかじっているのは人参かと思っていたが、葉っぱをみると人参の細い葉とは全然違う。大根系のギザ葉である。細長いラディッシュなんだろうか。(後で絵本で確認したら、やはりラディッシュだった。)
ここのショップで、ウィンダミアに来て初めて数人の日本人に会った。ここでピーター・ラビット・グッズ購入。そしてもちろん絵本を買った。
THE WORLD OF BEATRIX POTTERにて。オトナでもうれしくなってしまう。
ウサギ見物の後、しばらくボウネスの街中をぶらつく。ピーター・ラビット専門店はよく流行っている。またお菓子屋さんやお土産屋さんが多い。さすが、英国を代表する観光地である。
ボウネスの町にて。左の写真は、ピーター・ラビット専門店、Peter Rabbit and Friends.
Windermere Lake Cruise
まだ日が高いし、7時30分に予約したディナーまで時間が余っている。修復されたアマゾン号とスカラベ号が展示されているという蒸気船博物館に行くか、それともレイク・クルーズのどちらに行こうか、と悩む。
結局アンブルサイド往復のレイククルーズに出かけることにした。ベル島(ランサムサーガではロング島です。)を過ぎると、いくつか小島が見える。ティティが独りでワッチをしていた小島はどの辺だろうか、、、、、。うーん、このあたりはランサム・サーガのエピソードがいっぱいあって興味が尽きない。湖上にヨットがたくさん出ている。さすがに「ツバメ号とアマゾン号」時代のガフリグのディンギーではなく、スループリグばかりだ。湖上から本日のホテル、ラングデイル・チェイスを発見。湖上から眺めると一段と素敵なホテルだ。
ウィンダミア湖レイククルーズの際の写真。右は湖上から見たラングデイル・チェイス。
Ambleside
アンブルサイドにつく直前に、「この船はもうサービス終わり。6時40分に違う船が来るから、第1埠頭で待つように」、というアナウンスが流れる。
なに?そんな話は聞いてない!7時30分のディナーには余裕を持って間に合うと思ったけど、計算が狂った。
しょうがないので、次の船が来るまでアンブルサイドの波止場、ウォーターヘッドを散歩する。このウォーターヘッド、ランサム・サーガでは「長い冬休み」の「北極」である。ここの土産物屋はセンスがいいし、値段も安い。ウィンダミアのティータオル、指貫を購入。
6 時40分、定刻通り次の船がやってきた。埠頭ぎりぎりのところでアスターンに切り替え、後はその行足で、ぴったりと埠頭にくっつける。見事な操船ぶりだった。
アンブルサイドのウォーターヘッド桟橋にて。ここにも木造船がたくさんあって、雰囲気が良い。
Bowness-on-Windermere - Langdale Chase Hotel
7時10分、定刻通りボウネス到着。そこから歩いて駐車場へ戻る。
行きはムカデバスで来た道だが、歩くと10分ぐらいかかった。車を飛ばしてラングデール・チェイス・ホテルに急行する。
7時35分にホテルに到着。
ディナータイムを8時にしてくれといったら、混むので、なるべく早く行ったほうが良いですよ、とのこと。着替えて急いでダイニングルームへ。一応それなりの格好をしていったので、ウィンダミア湖がよく見える良い席に通してくれた。コッツウォルズより北なので、日の暮れるのが一段と遅く、まだ十分明るい。
ここもThe AAの評価では、食事は赤ロゼットを2つもらっているレストランだったが、いまいちだった。
妻は夏野菜料理をスターター、メインは野鳥料理、デザートはピーチメルバを選ぶ。(このピーチメルバ、巨大で食べきれず!)
私は野鳥のテリーヌをスターターとして、そしてメインコースはビーフのフレンチスタイル、デザートはレモンフラン。
綺麗に着飾ったカップルが多い。ばりっとスーツを着たおじいちゃんが、これまたエレガントなドレスを着たおばあちゃんをエスコートしてやってくる。女性二人のカップルも目立つ。お洒落をして食事するのが楽しみの様子である。よく見ると日本人もいる。英国に来て、初めて同じホテルで日本人に出会った。
このレストランは、デザートまでをレストランのテーブルで食べ、その後ラウンジでコーヒー、というサービスだった。レストランの隣のバーの横のラウンジに行ったが、このホテルもやたらたくさんラウンジがある。毎日違うラウンジでコーヒー飲んでも、すべてのラウンジを体験するには、かなり日数がかかりそうだ。
アンティークなピアノのあるラウンジにて。
食後、部屋に戻り、メールチェック。このホテルでも問題なくダイヤルアップできた。
今日は長距離移動で疲れた。お風呂に入って、早めに休む。