2001年8月9日 (木曜日)
コッツウォルズからウースターシャーのイブシャムへ
Broadway - Chipping Campden - Stratford-upon-Avon - Evesham
まだ時差ぼけがあり、朝6時過ぎには起床してしまう。
例によってシャワー、そしてTVで天気予報確認。本日はほとんど雨で、気温も低めとのこと。観光には向かない天気のようだ。最高気温18度は、日本では10月末の気温である。
7時45分ぐらいにメインダイニングに降りていく。
そんなに早い時間でもないと思うのだが、誰もいない。ひょっとして朝食のレストランが別にあるのか、と思ったが、ちゃんと注文を聞きに来たので、ここで良いらしい。
ホット・ディッシュ(卵料理など)以外のシリアル、ジュース、ヨーグルトなどは、ビュッフェから好きなものを取って来てください、とのこと。ホット・ディッシュはもちろんフル・イングリッシュ・ブレックファストにする。昨日より更に美味だった。昨日のオールド・パーソネッジ・ホテルでは、トーストがバスケットに入ってサーブされたが、リゴン・アームズではトースト・ラックでサーブされる。英国式トーストは厚さ5mmぐらいの薄いものをかりかりに焼いて出してくれる。薄いので何枚でも食べられる。
リゴン・アームズでの朝食。中央がトーストラック。
食後、妻の実家に電話をかけるも、誰も出ない。
日本時間では夕方5時ぐらいのはずなのに。英国にちゃんとついたかどうか、心配しているといけないので、PCからファックスを送り、近況を知らせる。
9時半にチェックアウト。宿泊料、食事代ともに高かったが、それだけの値打ちはあったと思う。本日の宿泊のウッド・ノートン・ホールはすぐ近くなので、スーツケース2個を夕方までキープしてもらう。
とりあえず、シェイクスピアの生誕地として高名なストラトフォード・アポン・エイボンを目指す。シェイクスピアが目当てなのではなく、テディ・ベア・ミュージアムを見てみたいからである。
Stratford-upon-Avonへ向かう途中の路上で。典型的なブロードウェイの町並みです。緑地帯が広いのが特徴でしょうか。
Chipping Campden
コッツウォルズの魅力的な村をいくつか通過していく中で、途中のチッピング・カムデンで引っかかってしまった。
ここはブロードウェイと違って、ずっと素朴な町並みである。ハイストリート沿いに、ライムストーンの家並みが続く。中心部にある中世のマーケットの建物がこの村のシンボル。ボートンやブロードウェイに比べると、観光客はとても少なく、日本人は見かけない。コッツウォルズの中では、比較的観光地ばなれした村ではないだろうか。
現地の人々のみが、ゆっくりと時を刻んでいる感じで、それゆえにとても落ち着ける村である。可愛らしい店を次々と回っていたら、お昼近くになってしまった。
チッピング・カムデンのマーケットハウスと古い町並み。Thatched Roofと呼ばれる茅葺家屋も歴史を感じさせます。
Broadway
結局、午前中にストラトフォードには行けなかった。
昨日の陶器屋さんに、「お昼ぐらいに、一緒に送ってもらう荷物を持っていきます」と約束していたので、そのままブロードウェイに戻る。
段ボール箱を持ってお店に入っていくと、「はい、待ってたよ」と、おじさんは愛想良く迎えてくれた。
しかし、我々の持ち込んだ量を見て、あまりの量に、「こりゃまた、想像した以上の多さだな、、、、、。」と驚く。そりゃそうだ、あれからブロードウェイで買い物しまくったんだから。^^;
しかもティーポットや紅茶、陶器類などかさ張って重いものばかり。しかも他の店で買ったもののほうが多い。でも、おじさんは再びスマイルに戻り、「問題ないさ。壊れないようにしっかり梱包して上げるからね。」と、てきぱきとパッキングを始めた。
クッションを上手に詰めながら、一分の隙間もないように詰めていくその手際は、プロといえども素晴らしい手並み。
「ぼくはパッキングの天才を見ているのに違いないですね!」と言ったら、横で奥さんが笑いながらご主人に、「あんたが作った小包の中で一番の出来栄えよ!」とほめる。
本人いわく、「この村で生まれて、何十年もこんなことばかりやってきたからなぁ、、、、。」と照れくさそうだった。
20分ぐらいでしっかりした小包が完成した。めちゃくちゃ重い。40Kgはある。ポロのトランクに入れたら、車高が明らかに下がった。果たして郵便局で扱ってくれるだろうか、、、、。
うれしかったので、チップを渡そうとしたが、おじさんは「これが仕事だから、、、」と言って、がんとして受け取らない。ちなみに、この親切なおじさんのお店は、THE
TREASURE TROVEという。「貴重な発見物」というような意味だと思うが、まさしく我々にとっては貴重なお店だった。リゴン・アームズを出て右に2〜3分のところにある。
親切なトレジャー・トローヴ。お土産屋さんかくあれかし。
その後、ストラトフォードへ。再びチッピングカムデンを通る。郵便局を見つけたので、帰り道による予定。
ストラトフォードにいたる途中に、有名な庭園、ヒドコート・マナー・ガーデン(Hidcote Manor Garden)の看板を見つける。天気が良かったらぜひ入ってみたかった庭園だが、雨脚があまりに強いのでパスした。ミクルトンのあたりまではのどかなコッツウォルドの風景だが、ストラトフォードに近づくにしたがって、住宅が増え始め、道が混み始める。
Stratford-upon-Avon
クロプトン・ブリッジでエイボン川を渡り、ストラトフォード・アポン・エイボンに到着。
ここは大観光地である。雨にもかかわらず、余りの観光客の多さにたまげる。駐車場を探して右往左往した。「P」のサインにしたがって走っていくと、程なく5階建ての駐車場を見つける。ここは日本の駐車場と同じスタイルで、入るときに駐車券をもらって、出るときに精算というスタイルである。
駐車場から10mほど歩いたところが広場になっている。ちょっと右往左往していたので、現在地がよく分からない。地図を見ると、目的のテディ・ベア・ミュージアムは、由緒あるホワイトスワンホテルの近くらしい。目を上げて回りの風景を見ると、目の前がそのホワイトスワンホテルだった。
ということはその左側を見ると、、、、。ビンゴ。よくぞこんな近くの駐車場に、、、、って感じ。さっそくミュージアムを訪れる。
規模はさほど大きくなく、内容も期待外れだった。しかしせっかくストラトフォードまで来た記念に、ミュージアムグベア1匹と、この子に着せるストラトフォード印のセーターを購入。
やれやれ、とりあえず一仕事終わったので、ホワイトスワンホテルで、昼食にする。
リッチな朝食を食べているので、さほど食欲がなく、クリームティーを注文。このクリームティーとは、そこらじゅうで見かけるメニューで、紅茶とスコンのセットのことである。スワンホテルのスコン、まずくはないが平凡だった。クロテッドクリームは、日本のコーヒーフレッシュを二回りぐらい大きくしたプラスチック製のカップに入っているものが出てきた。
ストラトフォードのテディ・ベア・ミュージアム。右はホワイトスワンでのクリームティー。
Chipping Campden
その後、再びチッピング・カムデンへ。まず先程見つけておいた郵便局へ立ち寄る。
ちょっと離れたところにポロを止め、トランクから日本送りの小包を取り出す。これは実に重い、重過ぎる!妻と二人でひいひい言いながら運ぶ。しかも郵便局に持っていったら、目方も重いし、サイズも大きすぎて、郵便では送れないとのこと。
郵便局のおねえさんが気の毒がって、「二つに分ければいけるかも、裏庭にカートンボックスがいくつかあるから、分けてみる?」と言ってくれたが、せっかくパッキングしてくれたブロードウェイのおじさんの努力を考えると、それもできない。「ホテルでFEDEXに頼みます・・・」と固辞して郵便局を退出した。
40kgの小包をうなりながら運んでいたら、郵便局に入ろうとしていた高校生ぐらいの男の子が、「手を貸しましょう」と助けてくれた。ポロまでの50mぐらいだが、大いに助かってしまう。ゼーゼー言いながら感謝を伝えると、「なんてことないです。良い旅を!」と爽やかな返事とともに、郵便局の中に消えていった。うーん、チッピング・カムデンの若者はすばらしい。親の教育が良いのだろう。
Broadway
再びリゴン・アームズに戻り、預けておいたスーツケースをもらう。
「コッツウォルズを楽しんだかね?」と、スーツケースを運んでくれたポーターのおじさんは陽気に話しかけてくる。チップを渡そうとしたら、「朝たんまりもらったからいいです!」とこれまた受け取らない。どうやらアメリカと違って、英国ではチップという習慣が廃れつつあるようだ。
また、「小包を日本まで送りたいんだけど、、、、死にそうに重いけど、、、、。」と頼んだら、コンシェルジュのおにいちゃんを紹介してくれた。
このおにいちゃんも、ゲストのリクエストに一生懸命応えようとする人だった。
まずFEDEXで国際宅急便のコストを問い合わせてもらう。40Kgだと、なんと239ポンドとのこと。「そりゃ高い!飛行機のエクセス・バゲージで持ち込んだほうが安いぞ!」と、隣りにいたポーターのおじさん共々怒り始め、JALのエクセス・ラゲージを電話で問い合わせてくれる。
しかし、結果は×。JALの場合、ファーストクラスで35KG、エコノミーは20KG以上のエクセスは有料となり、法外な値段になるとのことだった。
うーん、じゃあ船便をチェックしてみよう、ということになり、数箇所調べてもらったら、一番安いところでも、350ポンド!「ごめんなさい、どんどんひどくなってるみたいです。」と、おにいちゃんが申し訳なさそうに言う。
しょうがないので、FEDEXに頼んでもらう。支払いはリゴン・アームズが代行してくれる、ということになったので、クレジットカードで支払う。キャッシャーのおねえちゃんが、「私もスペインに行ったときにFEDEXを使ったけど、とっても安かったんですよ。やはり日本は遠いんですね、お気の毒に、、、、。」と言ってくれた。「いやぁ、衝動買いって、たいてい不幸な結果を招くものなんですよ。」と答えたら、「しかり!」と笑っていた。
でも、リゴン・アームズのスタッフの仕事ぶり、チームワークには感動した。こんな経験ができたので、輸送コストは高かったけど、満足だった。
その後、今来た道を反対にとって、イブシャム(Evesham)へ向かう。イブシャム近辺の道はごちゃごちゃしていて、分かりにくい。予習した地図が頭に入っているはずなのに、間違えてしまう。「ちゃんと地図を見てろよ!」「あんたがしっかり頭の中にいれてないからいけないのよ!」と、夫婦喧嘩が始まる始末。^^;でも、何回かラウンドアバウトでUターンしているうちに、本来進むべき道に無事戻ることができた。
Evesham (Wood Norton Hall)
緑濃い道をかっとばしているうちに、ウッド・ノートン・ホールの看板を発見し、右折する。
エントランスからくねくねと坂道を上がっていくと、突然、ウェブサイトで見た、グレード1と称する印象的なホテルが出現した。
ウッド・ノートン・ホールを駐車場側から見たところ。
レセプションは、落ち着いた素敵なホールに机が一つ置いてあるだけだった。
気さくで愛嬌たっぷりのレセプションのおねえちゃんがチェックインをしてくれた。名前確認、住所と名前のサイン、新聞銘柄確認。
ポーターのおにいちゃんはフレンドリーなオーストラリア人だった。このような伝統的なホテルで働きたくて、英国までやってきたとのこと。例によってエレベーターはない。おにいちゃんは3階まで、重くなったスーツケースを表情も変えずに運んでくれる。3階にいく階段の横に、古いシャワールームがあった。昔のご領主様の専用シャワーだと言う。「まだ使えるの?」と聞いたら、「冬は寒くて拷問に近いですよ、ははは。」とのこと。
今日のベッドルームも英国的センスに溢れた良い部屋である。
レセプションのちょうど真上にあたり、窓からウースターシャーの丘陵が見渡せる。この時間になって、雨が上がり晴れてきた。コーヒーテーブルの上に、私宛てのレターが置いてあり、開封すると昨日同様、支配人からのレター。「お待ちしておりました。どうぞ、ご遠慮なく何でもお申しつけください。」だった。よく読むと、このウッド・ノートン・ホールは、ホテル・オブ・ザ・イヤー・2000に選ばれたのだそうだ。これって、昨年度、全英で一番優れたホテル、って意味なんだよな。ふーん、知らなかったが、すごいホテルだったんだ。よくぞ選んだものだと、自分をほめる。^^;
ウースターの丘陵が見えるベッドルームと、夕日に輝くウッド・ノートン・ホール。
ディナーを7時過ぎに予約した。
ディナーの前にホテル内外を探検する。オークの壁は改修したばかりのようで、まだ新しい。貫禄はないが、丁寧な仕事ぶりの内装である。このホテルのかつてのオーナーはフランスのブルボン王朝ゆかりの貴族だったそうで、その王朝のシンボルである百合のパターンがホテルのいろいろな場所で見受けられた。天井のパターン、壁の漆喰、オークパネルなど、各所にある。よく見るとレセプションの横の壁に、誇らしげに「ホテル・オブ・ザ・イヤー・2000」の認定証が掲げてあった。
ホテルの庭を見ると、中年の夫婦が手を取り合って夕日の中を散歩している。うーん、素敵な風景だ。
着替えてこれからディナーです。改修したばかりで、まだ新しい感じのインテリア。右はHotel of the year 2000の認定証。
着替えをして階下に降りていき、まずバーで軽く一杯やりながら、メニューを検討する。
私は、スターターをあんこうの自家製薫製のロースト、メインコースは豚肉のアンチョビーソースとする。妻のスターターはニース風サラダのウッド・ノートン風、そしてメインコースがビーフ・トルネード、早い話が豪華なステーキである。
ディナーの注文を取る人は、普通のウェイターとは明らかに格好も態度も違う。いかにも「これからディナーを楽しんでもらいますよ」、と言った感じを漂わせながら、注文を受け付けてくれる。このウェイターさん、やたらと背中がぴんと伸びて姿勢が良く、丁寧な物腰だった。カズオ・イシグロの「日の残り」に出てきそうな「品格」を感じる。
ラウンジには、学校か会社のセミナーで泊まり込んでいるとおぼしき人々が集っている。
ホテルの雰囲気にそぐわないほどにぎやか。そう言えばウッド・ノートン・ホールのサイトを覗いたら、「各種セミナーを開催出来る特別室があります。」となっていた。きっとそのたぐいの人々なのだろう。先ほどの素敵なカップルは、この喧燥を避けて、バーの別室でゆっくりと過ごしている様子。
姿勢の良いウェイターのおじさんが、ディナーの準備ができた、と知らせてくれたので、メイン・ダイニングルームへ移動する。
暗い部屋の中にキャンドルがともり、シックで落ち着いた雰囲気のダイニングルームだった。
食器も素敵な食器を使っている。昨日のリゴン・アームズのディナーも美味だったが、ウッド・ノートン・ホールのディナーはその上をいく。サービスも的確でそつがない。
デザートは例によってラウンジにて。私のは、チュイールをバスケットにしてそこにアイスクリームとシャーベットが3種類乗っているというしろもの、妻のはパイナップルをベイクしたものがベース。コーヒーにはプチ・フールもついてきた。それぞれ味見をしたが、まずなにより美味しいし、「楽しませよう」という工夫に感心する。さすが、ホテル・オブ・ザ・イヤー・2000である。
ウッド・ノートン・ホールの美味しいデザートです。
今日は疲れたので、メールチェックはなし。デジカメから写真をPCにコピーしただけ。気持ちのよいバスルームでゆっくりとバスタブに浸かっていたら、すぐに眠くなってしまった。