Rievaulx Abbey, Yorkshire
ヨークシャーのみならず、イングランドでもっとも美しい修道院の廃墟のひとつがリーヴォー・アビイです。 リーヴォー・アビィは、1132年に作られた北イングランドで初めてのシトー派の大修道院で、最盛時にはヨーロッパ中でもっとも繁栄した修道院でした。しかし、ヘンリー8世の修道院解散令で1538年に壊されてしまいました。 現在は、イングリッシュ・ヘリテッジによって管理されています。 これはリーヴォー・アビィの入り口です。正面が売店になっていて、中に入るとグレゴリアン・チャントがおごそかに流れていました。 |
リーヴォー・アビィは、スケールでこそファウンテンズ・アビィに負けますが、そのたたずまいは、より哀愁が漂っていて、ファウンテンズより好きです。 |
リーヴォーの魅力は、その変化に富んだ構成ではないでしょうか。 かなり原型残っている部分と、ほとんど瓦礫になっている部分のバランスがちょうど良いと思うのです。 あまり壊れていないと、はかなさが感じられず、つまらないし、壊れすぎていると往時の華やかさが感じられず、これまたつまらないのです。 。 「つわものどもが夢の後」的な、わび・さびが感じられるためには、その壊れ方の美学があると思うのですが、リーヴォー・アビィはその美学にかなっていると思うのです。 |
リーヴォーはヘリオット先生にとっても思い出深い場所だったようで、James Herriot's Yorkshireで、ヘレンとの結婚前の交際のころの思い出が紹介されています。 「ヘリオット先生奮戦記」(All Creatures Great and Small)の後半で、ヘリオット先生とヘレンが映画館でデートをするエピソードがあります。 これはレニストンのデートがうまくいかなかったリターンマッチみたいなもので、何事もおきそうにないダロウビーの映画館を慎重に選んだつっもりだったにもかかわらず、映画館の中は異常に蒸し暑いわ、頭のねじの緩んだ男、ゴバー・ニューハウスに絡まれるわ、散々な目にあって二人のデートはまたもやろくな結果に終わりません。 それゆえ、このエピソードは「この次はただの散歩にしましょうよ」とヘレンのせりふで終わるわけですが、彼ら二人がその次にデートに選んだ場所がこのリーヴォー・アビイだったそうです。 ヘリオット先生はヘレンに連れられて初めてここを訪れたのですが、あまりの美しさにショックを受け、しばらくの間、口を聞くことができなかった、と告白しています。そんなわけですから、彼らのデートがはじめてうまくいったのは言うまでもない?ことのようでした。 |
リーヴォー・アビィの南窓です。 通常、大きな教会や修道院は上から見ると十字架の形をしており、その長い軸が東西に来るように作られます。そして、東窓が祭壇のある場所になります。 しかし、リーヴォーの場合は、長軸は南北で、祭壇が南を向いています。スロープが急すぎて通常の東向きができなかったしいのですが、珍しいです。 |
ヘリオット先生のLET SLEEPING VETS LIEの中のGhost of Rains Abbeyも、このリーヴォーを舞台にしていたようです。しかしながらBBCのTVドラマを見ると、トリスタンが上っていた廃墟のアーチは、この写真のような凝ったものではなく、もっとシンプルな形をしていました。 それゆえ、TV版でのこのエピソードのロケ地は、Middleham近くのJervaulx Abbeyのような気がするのです。 |
廃墟の前で馬が草を食んでいる・・・・。侘びとさびを感じます。 |