Dedworth, near Windsor, Berkshire



All Saints Church

デッドワースは、ウィンザー城の西にある住宅街です。このデッドワースの教区教会が、オール・セインツ教会です。

デッドワースの教会は、1862年にその基礎が築かれ、ラファエル前派と親交のあった建築家、G.F.Bodleyの設計で1866年に完成しました。
しかし、1920年代に構造的欠陥によって崩壊の危険があることがわかり、1971年に建替えられ、現在の建物になりました。

初代の建物の当時から、この教会には初期のモリス・マーシャル・フォークナー商会のステンド・グラス・ウィンドウがはめ込まれていました。二代目のこの建物にも、そのグラスは保存されています。

そのステンド・グラス・ウィンドウは、商会の抱えるデザイナーのショーケースとも言うべき豪華さでした。

William Morris自身を始めとして、 Edward Burne-Jones, Dante Gabriel Rossetti、Ford Madox-Brownと、ラファエル前派のアーチストによってデザインされたウィンドウが並んでいました。





The Nativity by Burne Jones, 1863

バーン・ジョーンズのデザインによるこのウィンドウは、1863年に作られ、元々はChancel Windowに嵌められていました。

ネイティビティは、「キリストの降誕」を意味しており、聖母マリア、ヨセフ、幼子のキリスト、羊飼いと天使たちが描かれています。ウィンドウ上部に見える天使は聖マタイ、ライオンは聖マルコのシンボルです。

このバーン・ジョーンズのデザインの原画は、Birmingham City Art Galleryで見ることが出来ます。



The Nativity by Burne Jones Detail

上記ウィンドウの拡大です。いかにもバーン・ジョーンズ、という描きっぷりです。中央の鳥は、フィリップ・ウェッブが描いたのかもしれません。




The Crucifixion by Rosetti, 1863

モリス商会のウィンドウの中でも、ロセッティのデザインのものはそんなに多くありませんが、これはその数少ないうちのひとつです。このウィンドウは、1863年に作られ、元々はChancel Windowに嵌められていました。

The Crucifixionは、「キリストの磔刑」という意味で、聖母マリアを左に、磔刑のイエス・キリスト中央に、福音記者のSt John the Evangelistを右に配置し、その周りに天使たちが取り囲むという図柄です。
また、太陽と月の紋章が上部に描かれています。




The Crucifixion by Rosetti Detail

上記の拡大です。ロセッティは、ステンド・グラスの原画を描くのが不得手だった、とのことですが、なかなかどうして立派な窓に仕上がっています。



The Resurrection by William Morris, 1863

このウィンドウはウィリアム・モリス自身のデザインで、1863年に作られ、元々はChancel Windowに嵌められていました。

The Resurrectionは、「キリストの復活」を復活を意味しており、イエス・キリストとその使徒たち、天使が描かれています。
聖ルカのシンボルである牛と、聖ヨハネのシンボルである鷲が上部に描かれています。

教会に残る1862年12月の書類によれば、「ロセッティは、Dedlicote windowの中央部にCrucifixionを描き、バーン・ジョーンズはその左側にNativityを描き、モリスはResurrectionを反対側に描くことに同意した。バーン・ジョーンズの画料は£5、モリスの画料は£3である。」となっているそうです。

バーン・ジョーンズに比べて、モリスの画料は安かったんですね。




The Resurrection Detail

上記の拡大です。典型的なモリスのデザインです。アカデミックなうまさはありませんが、私はこのヘタウマが好きです。



The Annunciation, 1863

The Annuciationは、「受胎告知」という意味で、元々は南廊に嵌められていた窓です。Burne-Jonesのデザインで、2つの窓に分けられており、これはその左側の部分です。

大天使ガブリエルが巻物を持って、聖母マリアのもとにやってきたところです。

このデザインは、過去にスカーバラのSt Martins教会で使われており、現在その原画が、Birmingham City Art Galleryに残っているそうです。



The Annunciation, 1863

こちらは「受胎告知」の右側の窓です。
大天使ガブリエルからの受胎告知を聞く聖母マリアさまです。大きな百合の花がシンボルのようです。



St Anne by Maddox Brown, 1873

元々は、南廊の中央にあった窓です。デザイナーは、フォード・マドックス・ブラウンです。

マドックス・ブラウンは、ビクトリア朝の重要な画家の一人で、ラファエル前派兄弟団のメンバーにこそなってはいませんでしたが、兄弟団メンバー以上にラファエル前派的な考え方を理解している画家でした。

彼はロセッティやバーン・ジョーンズ、モリスらと常に親しくしており、モリス商会のステンド・グラスの原画を何点か提供していますが、元々が油彩の人ですから、ステンド・グラス・ウィンドウのデザインは苦手だったらしいです。

しかし、さすがに人間の感情表現は素晴らしく、商会のステンド・グラスのデザイナーの中では、もっとも人間臭い絵を描いているように思います。



St Catherine by William Morris, 1873

モリスのデザインによるセント・キャサリンです。



The Virgin and Child by Burne Jones, 1877

バーン・ジョーンズによる聖母マリアと幼子キリストです。このデザインは、TilehurstのSt Michael教会のウィンドウでも使われていました。

背景の描き方がいかにもウィリアム・モリスっぽいです。



St Nicholas with Babe by Burne Jones, 1877

これもバーン・ジョーンズのデザインによるセント・ニコラスと幼子です。



St Elizabeth by Burne Jones, 1881

元々北廊の中央にあった窓だそうです。


St Gregory by Burne Jones, 1881




St George by Burne Jones, 1887

1887年の作品です。初期の作品に比べると、手馴れてきているというか、様式化されたデザインになってきています。



St Ursula by Burne Jones, 1887

これも1887年のデザインです。描きこみ方があっさりしています。