James Herriot - Books of Reference



ALL THINGS HERRIOT - HIS PEACEABLE KINGDOM (Sanford Sternlicht, 1995)

アメリカのシラキューズ大学出版部から刊行された、サンフォード・スターンリヒト氏による、「ヘリオットワールド」の研究本です。

「なぜシーグフリードとトリスタンは、ドイツ的な名前をつけられたのか?」など、ヘリオット先生の各作品の文学的研究や考察に満ちた本です。



JAMES HERRIOT - THE LIFE OF A COUNTRY VET (Graham Lord, 1997)

ヘリオット先生の第2作目、IT SHOULDN'T HAPPEN TO A VETが出版されたとき、最初に好意的な批評をサンディ・エクスプレスに載せたのが、この本の著者、グレアム・ロード氏です。

彼の書きっぷりには、「ヘリオットを有名にしてやったのは私」、というニュアンスが感じられます。

また、本文中の情報にも、愉快でない記述が多いです。
「アルフの妻、ジョアンはきつい女性で、ヘレンのモデルとは違う。ヘレンのモデルはアルフがグラスゴー時代に付き合っていたナン・エリオットである」とか、「ジョアンとアルフの母親、ハンナ・ベル・ワイトは犬猿の仲だった」とか、「アルフは妻にも母親にも、一生頭が上がらなかった」とか、「アルフが英国空軍をお払い箱になった原因は、彼の持病の痔ろうにある」とか「シーグフリードのモデルであったドナルド・シンクレアは、アルフを搾取し、長い間、無給で働かせた」とか、とにかくヘリオットファンが読んだら幻滅しそうなことがいっぱい紹介されています。

しかし、そのうちのいくつかについては、下記のジム・ワイトによる「検定済伝記」によって否定されています。




THE REAL JAMES HERRIOT - THE AUTHORIZED BIOGRAPHY (Jim Wight, 1999) 

アルフ・ワイトのご長男にして、父親と同じ獣医の道を歩んだ、ジミー・ワイト氏によるヘリオット先生の伝記です。

サブタイトルは「検定済伝記」となっているのを見ると、「ヘリオット先生の生涯について、あまりに誤解された情報が流布されている」のに腹立ちを覚えて、ジミーはこの本を書いたのではないか、と邪推してしまいます。その腹立ちの原因のひとつは上記のグレアム・ロード氏の著作なのかもしれませんが。

ヘリオット先生の一番身近にいた人物だっただけに、ジミーの記述は説得力があります。家族の記述になると、ちょっと表現が甘くなる傾向があるのはやむを得ませんが。^^;

おもしろい秘話がいろいろ紹介されております。
たとえば税金対策の話。ヘリオット先生ほどのベストセラー作家になれば、当然税金対策を考えなければならないのですが、ヨークシャーを離れたくなかったヘリオット先生は、節税のためにジャージー島などのタックス・ヘイブンに住居を移すことを潔しとせず、サースクに住み続けて、毎年、多額の税金を女王陛下のために納めたのだそうです。

また1960年代初期のヘリオット先生は、かなり深刻な鬱状態にあったことなども、家族ならではの心配げな筆致で紹介されています。

この本は私のウェブサイトのヘリオット先生情報ソースとして、非常に貴重なものとなっております。また、数々のヘリオット・サーガを翻訳されている大熊栄さんによる日本語訳が、「ドクター・ヘリオットの素晴らしい人生〈上〉〈下〉 (集英社文庫)」として、2006年に出版され、 より手軽にヘリオット先生の生涯に触れることが出来るようになりました。

また、カークゲート23番地にあったスケルデールハウスこと、ジム・ワイト氏の獣医診療所は、ドナルド・シンクレアの遺族たちが地域の自治体に売却してヘリオット博物館にしてしまったため、現在はサースクの町外れ、A19道路の近くに移動しました。名前は"Skeldale Veterinary Centre"となっており、よき時代をしのばせるものとなっています。

なお、ジム・ワイト氏は獣医をやめ、フル・タイムの作家になったようです。私が2003年に上記のSkeldale Veterinary Centreを訪れた際、その獣医病院の担当医リストには、ワイト氏の名前はすでにありませんでした。